No.43 ナズナ -中国の「野菜」―

日本語と中国語は同じ漢字でも意味が違う事があり、中国語で野菜は「蔬菜」、山菜は「野菜」と呼ばれます。ただし中国語の「野菜」には山菜という意味だけでなく、普段は雑草と見なさているが飢饉の時に食べる野の草という意味も含まれるため、日本語の「野草」に近い言葉と言う事が出来るでしょう。そんな中国の「野菜」の代表格はなんといってもナズナなのではないでしょうか。ナズナはどこにでも生えている言わば雑草ですから日本人はこれを山菜とは見なしませんが、中国では春の「野菜」として最も人気があるものです。

さて漢字で「萕菜」と書くナズナはグルメとして名高かった蘇軾の好物としても知られており、古くは『詩経』国風「谷風」に「其の甘きこと萕の如し」とその美味しさが詠われているほどです。日本でも春の七草の1つとして七草粥に入れて食べられていますが、以前はこの時期だけ市場で売られていたナズナも最近はめっきり姿を消し、七草の盆栽にされたり、七草セットと称してほんの形程度食べるに過ぎません。この点中国では春になると盛んにナズナを食べ、特に江南地方ではナズナの前菜、ナズナのスープ、ナズナと竹の子の葛引き等々、色々な料理に利用しています。かくいう私もナズナが大の好物で、1月になるとナズナを摘んで饅頭を作り家族で食べるのを楽しみにしています。

ナズナはちょっと探せばどこにでも生えていますが、茎が伸びる前の若菜はタンポポによく似ているので見過ごしてしまうかも知れません。見分け方はタンポポより葉の刻みが深く根元が赤味がかっており、葉をちぎるとゴボウに似た香りがあることでそれと解ります。そして1つ見つけると今まで気づかなかったナズナが次々に見え出して、それはもう夢中になって楽しいものです。以前、お世話になっている三浦の農家にナズナを採りに行った事がありましたが、ナズナが生えている畑と生えていない畑があり、どうしてなのか尋ねたところ、ナズナが生える畑は堆肥を施している畑で堆肥の中の種が発芽するのだそうです。農家にとっては厄介者の雑草ナズナですが、その味は野菜に劣らないばかりか、香りや濃厚な味わいは一般の野菜より優れているように感じられます。ナズナ好きの私としては以前のようにせめて七草の時期だけでも売ってもらいたいと思いますが、日本ではその食べ方が限られているので商品にならない「野菜」なのです。

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