No.41 元宵節の風俗

旧暦1月15日は新年になって初めて満月を迎える日であるため、この日を元宵節と呼んでお祝いします。古くは「上元」「元夕」と呼ばれたり、この日にランタンやボンボリを飾ることから「灯節」とも呼ばれました。由来は諸説あるのですが、1つは道教の神「天官」が生まれた日を祝うというもの、1つは釈迦が神変して群魔を降伏させたという日を記念するもの、1つは田の害虫を焼く火祭りに由来すると言うものなどで、漢の文帝が「諸呂の乱」を平定して帝位についたものこの日であったことから、漢代以降元宵節が盛大に祝われるようになったと言われています。

宋代の風俗を記した『夢梁録』などを読むと当時の元宵節はたいへんな賑わいで、歌舞音曲の一行が街路を練り歩き、料亭などは一晩中ドンチャン騒ぎする客で溢れたようです。庶民はそういう訳にはいきませんがそれでも町中にくり出し、華やかなランタンや美しく飾られた山車、滝のように点火された花火が輝いて昼間のような明るさなのを大喜びし、遠くの山に数千のかがり火が模様を描く様を見て楽しみました。また山から町を眺めると、人々が持つチョウチンが揺れてまるで天の川を横切る流れ星のように見えたそうです。人々はさまざまな見ものを楽しみましたが、中でも趣向を凝らしたランタンが一番の人気だったようです。最も豪華なものは五色のガラス板に山水画などを描き、大きいもので三四尺(90~120㎝)と言いますからガラスが貴重な時代としては大変高価だったことでしょう。また金箔や鼈甲、玉のビーズで飾られたもの、羊の皮で作った影絵や走馬灯などさまざまな趣向を凝らしたものがありましたが、一般的なランタンは薄絹で作られて花などが描かれていました。中には漢詩なども書かれ、隠語で話題の人物、世相などを茶化した物や「なぞなぞ」などもあったので、みな面白がって人だかりができたと伝えられています。

このように盛大に祝った元宵節の風俗は今日ではほとんど見る事が出来ません。かなり以前に香港でたまたま元宵節にぶつかったことがありましたが、広場の華やかな飾り物も元宵節の飾りではなく、明らかに春節の残り物だったので少しガッカリした記憶があります。その夜スターフェリーを降りると波止場に花束を売る女の子が大勢おり、聞いてみると今日はバレンタインデーとのことでした。バレンタインデーは女性からチョコレートをもらうものとばかり思っていましたが、香港では男性が女性に花束を贈るのだそうです。そう言われればレストランに入ってゆく若いカップルの姿があちらことらに見られ、レストランも窓に赤いチョウチンをたくさん飾り付けて華やかに装っています。このチョウチンは本来元宵節のための飾りなのにと思うと伝統が失われてゆくことに寂しさを感じるのですが、普段あまり口をきかない娘たちから「お父さんチョコレート」などと言われて嬉しがる自分を省みると、当節元宵節がバレンタインデーに変わって行くのも仕方ないことかと思えます。

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